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zoom RSS 【読んだ本】モーダルな事象/奥泉光

<<   作成日時 : 2005/11/24 22:35   >>

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ひと言で説明すると、SF&トラベルミステリー、なのかな?
大阪のしがない短大で日本近代文学を教える、
まるでうだつの上がらない助教授・桑潟幸一(通称:桑幸)のもとへ、
これまたまるで著名ではない童話作家の遺稿が持ち込まれる。
ところがこれが、発表するや予想外の評判となり、
桑幸助教授もにわかに脚光を浴びるのだが、
遺稿は盗まれ、持ち込んだ編集者は首なし死体で発見される…。

二段組ではないにせよ、単行本で500ページもある大作なので、
手に取るのを若干躊躇したし、読んだことのない作家だけれども、
なんとなーく面白いんじゃないかという予感がして買っちまいました。

文体は私の好きなパターンで、
ふざけている時の浅田次郎というか、ふざけている時の北杜夫というか、
テンポ良くムダな形容詞や喩えを挿入しながら、
登場人物を(いや、読者を、なのか?)小バカにするようなニュアンスも含みつつ
文章が進んでいきます。

冒頭で紹介したとおり、のっけから死人が出てしまう本格ミステリー。
ところが、死んだはずの編集者と、桑幸は食事を共にしそのあとバーにまで飲みに行って、
後に起こる事件の鍵となる不思議なコインまで貰っちゃっているのである。

カルト教団やアトランチィスの謎なんかも登場して、
真実と虚構、正気と狂気、現世と記憶がごっちゃごちゃになってくる。
何かがおかしい、誰かが仕組んでいる…。
謎に気づき事件を追いかけるのは、ジャズシンガーの北川アキと、
編集者の諸橋倫敦という「元夫婦刑事(デカ)」。

編集者・猿渡が殺されたあたりからすっかり夢見の悪くなった桑幸が、
夢か現か判じかねるような悪夢を見続け、
その悪夢が、北川アキと諸橋倫敦の元夫婦刑事の解き明かす謎、突きあたる事実を次々と予言し、
悪夢の中の出来事が半ば現実であったことを裏付けていくあたりの手法は、なかなかおもしろい。

果たして事件の謎は解け、犯人も逮捕に至るのだが、
それが物語の結末ではないところにも注目。
(ネタバレするのでもちろん書きません)

奥泉光の『モーダルな事象』、
私としては新しいタイプのミステリー作品で、読了してみて総じて面白かった。

が、ひとつふたつ難癖つけるならば、時代設定の徹底が甘い。

「MD世界心霊教会」なるカルト教団らしき存在がほのめかされ、
海に沈んだ謎の大国「アトランチィス」の鋳貨(コイン)が事件の鍵を握ったり、ということで、
サリン事件(95年)の記憶も新しく、世紀末を目前に控えた
1998年から99年にかけて舞台設定されているが、
その割には、桑幸助教授の連絡先を電話口であっさり教えてしまう出版社の
個人情報意識の低さが揶揄されたり、
「バカの壁よりアホの嵐!」なんて書籍広告が新聞に載ったり、
諸橋倫敦が旅先で、モバイルPCに携帯電話を繋いでサクサク検索したり、
思わず「それ、98年じゃありえねぇだろ!」とツッコミたくなる部分が散見されました。

それと、文章の「書き癖」ですね。
連続した動作を表現するときの助詞が、ぜんぶ「〜すれば」「〜れば・〜ば」なのです。
ぜーんぶ「♪あした浜辺をさまよえば、むかしのことぞ偲ばるる」の「さまえよば」状態。
あくまでも個人的な意見ではありますが、この表現て、
押さえるべきポイントで使ってこそ効果的なんじゃないのか、と思ったりするわけです。

ま、やたら気になったのでイチャモンつけてみましたが、
おもしろかったです。笑えたし楽しめたし、謎解きもおもしろく、
とくにラストの結末の付け方なんて、おもわず唸ります。

歌野晶午や恩田陸、我孫子武丸なんかも出ているこのシリーズ、けっこう裏切りません。

モーダルな事象』 奥泉光・著
文藝春秋 本格ミステリ・マスターズ \1,857-+税
モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)

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本年のミステリー中ベストワンか 奥泉光『モーダルな事象』
瞠目すべきは巻末のオマケにある千野帽子と名乗るお方の解説。これを読むと今読み終えた作品のイメージが一変するのだから、これは巻末のオマケではなく作品そのものの最終章ではないのか。 三流の女子短大で日本近代文学を講義する俗物・「桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活」(副題)振りに、プッ、フフフ、ゲラゲラ、ワッハッハと何種類かの笑いを押さえようとしても抑えきれない。酔生夢死のダメ男、トホホ男。人にほめられたい、一流になりたい、カッコよく見られたい、うまいものを食いたい、女にもてたいと人一倍欲は... ...続きを見る
日記風雑読書きなぐり
2005/11/25 09:41
モーダルな事象 (奥泉光)
純文学並に人間描写にこだわった娯楽作品、というのがわたしのツボなんですが、こういうスタイルは意外と少ないようです。奥泉光氏はその数少ない例外。 文学的にはマニアックなんだけど、内にこもっていなくて、この人なりに幅広い読者を楽しませようとする意志が感じられます。そして、練り込まれた文章や作り込まれたディテールはワンランク上の上質感。ことに、この作品では楽しみながら作り込んでいる様が伝わってきます。 ...続きを見る
読んだモノの感想をわりとぶっきらぼうに語...
2005/11/25 13:53
モーダルな事象 [奥泉光]
モーダルな事象奥泉 光 文藝春秋 2005-07-10 桑潟幸一は田舎の短大の国文科の助教授。特に大した業績もなかった彼ですが、新しい文学事典の執筆にかかわったことから、とある無名の童話作家の未発表原稿の発見者になってほしいと編集者から頼み込まれます。軽い気持ちで引き受け、紹介の記事を寄稿した桑潟ですが、それをきっかけに思わぬ事件に巻き込まれることになり…。 ...続きを見る
+ ChiekoaLibrary +
2005/12/09 16:35
「モーダルな事象」 奥泉光
モーダルな事象posted with 簡単リンクくん at 2005.10.16奥泉 光著文芸春秋 (2005.7)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る ...続きを見る
今日何読んだ?どうだった??
2005/12/13 20:20
モーダルな事象
モーダルな事象 奥泉光 ...続きを見る
本のある生活
2005/12/13 22:45
モーダルな事象 奥泉光 ●
モーダルな事象奥泉 光 文藝春秋 2005-07-10by G-Tools 長かった・・・。そして面白かった・・・。笑えた・・・。いろんな意味で、息もたえだえです。 ...続きを見る
IN MY BOOK by ゆうき
2006/01/28 00:52
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【読んだ本】モーダルな事象/奥泉光 こばけんdays/ウェブリブログ ...続きを見る
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2013/07/06 21:42
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
この面白さがワカル人にぶつかってうれしくなりました。
ぜひ『鳥類学者のファンタジア』をお読みください。
これよりも5割増で笑えます。
よっちゃん
2005/11/25 09:34
しまった!今ごろ気づいた!
TBにはTB返し、コメントにはコメント返しですよね!
よっちゃんさん、コメントありがとうございます。
私も「この面白さがワカル人にぶつかった」
なんて言ってもらえて嬉しいです。
お勧めの『鳥類学者のファンタジア』もぜひ読んでみたいと思います。
こばけん
2005/11/28 20:58
コメント&TBありがとうございました!
私も『鳥類』はこれから読む予定です!
分厚いから年末のお楽しみに…。
chiekoa
2005/12/09 16:36
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Josephfuts
2014/07/23 15:29

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