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zoom RSS 【読んだ本】蒲公英草紙 常野物語/恩田陸

<<   作成日時 : 2005/12/29 18:14   >>

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連作短編集『光の帝国』を読み終えて、すぐさま取りかかりました。
方々で「イメージしたものと違う」とか
「これが同じシリーズなのか」的レビューが上がっていることは、
かるく目にしたり耳にしたりしていましたが、
そんなことは気にせずに本作を読みました。
私としては納得。いや、満足。
「常野」とは、不思議な能力を持つ一族の名前で、
常に野に在り、群れず、権力を持たず、静かに秩序を保って生きていく人々。
そのコンセプトから考えれば、この『蒲公英草紙―常野物語』のように、
中島医師の娘・峰子によって吶々と語られる槙村の集落の物語は、
まさに常野の物語であり、“草紙”と名付けられるにふさわしいテンポです。

常野物語としては、すでに続編の『エンド・ゲーム』が刊行されているので、
シリーズ第2作、という意識でとらえるするならば、
今作『蒲公英草紙』は、まさに常野一族を描く長編第一作として
期待を裏切らないムードを醸していると思います。

ブックレビュー(いつから私のblogはそんな大それたものになったのか?!)
としては、基本的にネタバレ厳禁でいきたいところですが、
ここはシリーズ第2作ということで、
第1作の『光の帝国』は既読であることを前提に書こうと思います。
(とはいえ、ほとんどネタバレはしません)

蒲公英草紙―常野物語』で物語の中心になるのは、
日本古来の書物である記紀から、はては人ひとりの人生までを、
自分の中に「しまう」ことのできる能力を持つ、春田家の先祖。(おそらく)

時は、日清戦争と日露戦争の間のようであるから、19世紀末〜20世紀初頭。
“にゅう・せんちゅうりぃ”という表現が繰り返し使われているところからすると、
19世紀末だと思います。
処は、まったく大雑把なイメージですが秋田県と山形県の県境あたりの山里。(じゃないかな?)
一帯の集落を取りしきる槙村という旧家のもとに春田一家がやってきます。
春田一家がやってきたことが関係しているのかしていないのか、
集落の雰囲気がどことなく変わり、人々が生き生きと元気になっていきます。

しかし、山里の平穏で幸せな日々は、そう長くは続きません。
耐えがたい運命と対峙しなければならない槙村の家と集落。
物語は悲しい結末を受け入れざるを得ないのですが、
春田の家の人が、そんな中にも人々の中に“癒し”といえる気持ちを与えてくれます。

『しまう』ちからと、それを『響かせる』ちから。
春田の家は、そんな能力を持った「常野」の一族です。
そして、集落をまとめる槙村の家は、
常野の一族が訪れた際、かならず面倒をみると約束している。

病弱であるが、聡明で、曇りのない透きとおった心を持つ槙村家の末娘・聡子、
聡子の話し相手として槙村の屋敷に通うようになった村の医者・中島の娘の峰子、
春田家の小さな姉弟の紀代子と光比古。
物語はこの4人の少年少女の目を通して、とてものどかで瑞々しい風景として描かれています。

そうなのです。
蒲公英草紙―常野物語』は、不思議な力を持った常野一族の奇譚を読むほかに、
常野一族の持つ雰囲気を味わうことのできる作品だと思うのです。

連綿と流れ続ける歴史の中で静かに生きる常野一族。
しかし、歴史を刻んでいく日々は決して安寧なものではないという現実。
常野の一族が持つ“不思議なちから”というファンタジーの中にも、
現実に生きる人間の喜びや悲しみといった、心の揺らぎを感じ取ることのできる小説だと思います。

しかし!
恩田読者としては、当然ここで満足するわけにはいきません。
第3作の『エンド・ゲーム 常野物語』も、すでに入手したものの読んではいませんが、
当然「オセロ・ゲーム」の続編として、手に汗にぎる作品となっていることを期待したいですし、
恩田さん自身『光の帝国』の後書きで書かれているように、
現代の春田家の紀光が大きな仕事をするエピソードや、
「黒い塔」の亜希子も必ずや遠くない将来大きな仕事をすることでしょう。
前にも書きましたが音楽の女神・ミュウズに見守られた少女・ミサキも気になります。
「遠目」「遠耳」にフォーカスした物語も読みたいと思います。

恩田陸という紡ぎ手によって新しい世界が繙かれてしまった以上、
その先を期待せざるを得ないのが読者の心情というもので、
まずは新刊『エンド・ゲーム 常野物語』を読み、
実はその次に既刊の『黄昏の百合の骨』を読もうとしていて、
恩田ワールドにどっぷりつかっていくのです。

年末年始、そんなことでいいのかな?ってな迷いはござんせん(笑)

蒲公英草紙―常野物語』 恩田陸 著
集英社 \1,470-
蒲公英草紙―常野物語

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タイトル (本文) ブログ名/日時
蒲公英草紙 常野物語 恩田陸 集英社
昨日予告編(!?)を書いたので、やはり今日はこの「蒲公英草紙」で。 初めて恩田陸という作家を知ったのは、この「常野物語」の一作目でした。「常野」の人々の 設定が新鮮で面白くて、夢中になって読んだのを覚えています。当時あまり有名ではなかった 恩田陸という作家を、「面白いよ!」と人に勧めまくった記憶が・・。それからあれよあれよという間に 次々と作品を発表されて、一躍メジャーな存在になられましたねえ。思い出のあるシリーズなので、 とても楽しみにしていました。 ...続きを見る
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2005/12/29 22:32
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2005/12/29 23:10
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IN MY BOOK by ゆうき
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蒲公英草紙―常野物語恩田 陸 集英社 2005-06 舞台は20世紀初頭の東北の農村。村をまとめる槙村家の、病弱なお嬢様の話し相手を務める少女・峰子。彼女の視点から語られる、彼女をとりまく様々な人々と出来事を描いた物語です。 ...続きを見る
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2005/12/30 17:45
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蒲公英草紙―常野物語 ...続きを見る
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2006/03/21 23:03
「蒲公英草紙 常野物語」 恩田陸
ワタシ的評価:★★★★☆ ...続きを見る
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2006/05/26 22:14
蒲公英草紙<恩田陸>−(本:今年55冊目)−
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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
コメントとTBありがとうございます!新刊が出るんですね。知らなかった。楽しみだあ。この一族のお話は、初めて読んだ恩田作品なんで思いいれがあるんですよ。あの頃は「恩田陸?だれ、それ?」って感じだったんですが、こんなに凄い作家さんになられるなんて・・。感動です。
新作読んだらまた書きます。よろしくお願いしますね。
ERI
2005/12/29 22:35
こばけんさん、こんばんわ。
「エンド・ゲーム」もう出ているのですね!知りませんでした。
「オセロ・ゲーム」は、「ひっくり返す」とか、何がなんだかよくわからなかったので、逆に興味津々です。早く読みたいですー。

年末年始を恩田さん三昧とはなんと贅沢な(笑)。年末年始は「ネクロポリス」を読みたいと思っていたのですが、図書館の予約がまわってきませんでしたー(涙)。
june
2005/12/29 23:13
『エンド・ゲーム』思わず本屋で手に取ったらそのまま置けずに立ち読みにて読了してしまいました…。ごめんなさい!今度お金もって買いに行きます!(手持ちがなかったのです…)
chiekoa
2005/12/30 17:46
>ERIさん
TB+コメントありがとうございます。
ほんとにすごい作家さんになりましたね。
『蒲公英草紙』は、直木賞ノミネートです!

新作『エンド・ゲーム』も読みましたので、近々アップ予定ですよ。
またよろしくお願いします。
こばけん
2006/01/05 21:18
>juneさん
TB+コメントありがとうございます。
ホントに恩田陸三昧の年末年始でした。
と言っても毎日飲みすぎてあまり読めておらず、
まだ『黄昏の百合の骨』の途中です(^_^;

実は『ネクロポリス』も未読で…
まだまだ私の恩田ワールド徘徊は続きそうです。
(徘徊なのか…)
こばけん
2006/01/05 21:21
>chiekoaさん
TB+こめんとありがとうございます。
立ち読みで読了とはさすが!(笑)
ぜひブログにも感想書いて下さい。
今年もよろしくお願いします。
こばけん
2006/01/05 21:23
コメント&トラックバックありがとうございます。
本は図書館で借りる生活をしているので
最近の恩田作品は読めていないのですが、常野物語の続編が出ているのですね!
予約しなくては。
いとっち
2006/03/21 23:01
>いとっちさん
コメントとTBありがとうございます。
「常野」のシリーズもさることながら、
「三月」のシリーズもたまりませんよ〜。
ぜひこちらのネタでもやりとりしたいです。
こばけん
2006/03/22 01:47
今日読み終わりました。
しまっていた聡子様のお話のところで涙が出ました。
古めの話し言葉で始まるので、慣れるまでちょっとがまんして読んでいましたが、またまた途中から加速がつきました。

素敵な本を紹介していただき、ありがとうございます。
ねね
2006/08/02 23:05
>ねねさん
コメントありがとうございます☆
聡子様、涙出ますよねぇ…。。
それでいて心が浄化されるような感覚をおぼえます。
この世界観での続編を是非とも期待したいところです。
こばけん
2006/08/06 13:02

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