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zoom RSS 【読んだ本】さあ、気ちがいになりなさい/フレドリック・ブラウン

<<   作成日時 : 2005/12/05 17:54   >>

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画像今回はだいぶマニアックな路線で、
早川書房創立60周年記念で復刊された
「異色作家短編集」シリーズ(全20巻)の2冊目、
フレドリック・ブラウンの『さあ、気ちがいになりなさい』です。
全部で12篇収められていて,
一口で紹介するとSFショートショートといったところですが、
単なる未来ものやサイエンス・フィクションの斬り口にとどまりません。

この早川書房の「異色作家短編集」は、
もともと1962年に刊行されたというから、昭和37年の刊行。
作品自体は、1940年〜50年頃に書かれています。
つまり、第2次世界大戦を挟み、
戦後、世界が急激に科学的な発展を遂げている時代です。

そうした時代背景をもって書かれたといえば頷けるのは尚更ですが、
著者は、こうした科学的発展を発展と捉えず、
これを徹底的に疑問視することで、
人間性の喪失に警鐘を鳴らしているように読み取れます。

12篇それぞれが、かなり思慮に富んだ興味深い作品なので、
一篇一篇について感想を書いていくと、
ものすげぇ長いアーティクルになってしまいそうで(笑)、敢えてそれは避けておきますが、
そのくらい、読みながら深く思索を巡らせることのできる短編集です。

その代わり、というわけではありませんが、
私なりに感じた特徴みたいなものについていくつか。

先述した、科学的発展に対しての懐疑的な視線の象徴として、
フレドリック・ブラウンは、宇宙や地球外惑星、異星人などを登場させているのだと思います。
作品が書かれた時代よりも科学が遙かに発展し、
宇宙旅行や惑星植民地が可能になっている時代を背景にして、
そこに人間が本来あるべき姿、本質的に抱えているもの、を浮き彫りにしています。

収録されている短編「みどりの星へ」「電獣ヴァヴェリ」「ノック」「シリウス・ゼロ」は、
まさにそうした書かれ方をしています。
私が特に気に入った(というより気になった、とか、
心に引っかかったといった方が近いかも知れませんが…)のが、「電獣ヴァヴェリ」。
ある日、ラジオの音声にモールス信号のような雑音が入るのだが、
それが宇宙からの侵略の始まりとなり、
有機生命体でない宇宙からの何者かに地球が包囲されてしまう。
侵略者はラジオやTVの電波だけでなく地球上の電気すべてを吸収し尽くし、
人々は、電気発明以前の生活へと逆戻りする。
しかしそうした世の中が、不便きわまりなく不幸のどん底の世界かというとそうでもなく、
そこには、人類が本来するべき工夫や、助け合い、コミュニケーションが顕在化してくる。

ほかの短編でも同様に、SFという手法を通じて、
人類の本質を問い掛けるエピソードになっています。
また、「不死鳥への手紙」や他の短編などでも、著者の宇宙的な視線・視点を感じます。

また、著者は昆虫類、とりわけ、アリやゴキブリといった種類の昆虫に、
普遍性や不滅的なもの、宇宙的なものを感じていたようです。
それについては、「シリウス・ゼロ」や、
本書の表題にもなっている「さあ、気ちがいになりなさい」を読むと、よく解ります。

そういう意味でも巻末に収められた一篇「さあ、気ちがいになりなさい」が、
やはり最もフレドリック・ブラウンを象徴する作品なのでしょう。

新聞社に勤める男が、27歳の時に交通事故に遭うが、
自分がジョージ・バインという名の新聞社に勤める男であるという記憶は、
事故に遭って以降の3年分しかなく、
事故に遭う前の記憶によると、自分は27歳まではナポレオン・ボナパルトだったと考えている。
この男の気がふれているのか、あるいは超常現象的な「入れ替わり」が起きたのか…。
果たしてその真実を、本当の意味で証明することは出来るのか。
永遠に答えを出すことのできない問いかけがなされています。

翻訳は、SF、ショートショートの巨匠・星新一氏。
解説で漫画家の坂田靖子さんが書いておられるが、
発刊当時の名訳もそのままでの復刊となっています。

蛇足ながら付け加えると、坂田さんはフレドリック・ブラウンの大ファンで、
ブラウン作品を読みあさったそうですが、
彼女のどこか不思議な、しかし思慮が込められた漫画作品のルーツは、ここにあったのか!と、
解説を読んで思った次第です。

さあ、気ちがいになりなさい』 フレドリック・ブラウン著 / 星新一・訳
早川書房 \2,100-
さあ、気ちがいになりなさい (異色作家短編集)

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さあ、気ちがいになりなさい フレドリック・ブラウン 星新一訳 異色作家短編集 2 早川書房
早川が出しているこの「異色作家短編集」、面白い! これも不思議なテイストの作品がそろった、なかなか粒より の短編集。訳しておられる星新一さんの作風とかぶるところ もあり。訳と作品の両方楽しめるところもお得です(笑) ...続きを見る
おいしい本箱Diary
2006/02/17 21:33

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
>TBとコメントありがとうございます。
新しさと古き良き時代の両方を感じさせる本でした。
この早川のシリーズは注目してます。
いい本が復刊されるのは、うれしいですね。
ERI
2006/02/17 21:36
>ERIさん
TB返しとコメントありがとうございます。

>いい本が復刊されるのは、うれしいですね。
ほんと、そうですよね。
私も復刊して欲しい本(昔のソビエト文学)があって、
「復刊ドットコム」でリクエストしたんですが、
リクエスト数は悲しいかな一桁で、
まだまだ道は遠いようです。
こばけん
2006/02/17 22:11

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