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zoom RSS 【読んだ本】99%の誘拐/岡嶋二人

<<   作成日時 : 2005/12/12 18:49   >>

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誘拐を題材に扱った小説は数多ありますが、
これは、ゲームとしての誘拐を書いた作品として傑作と呼べます。
読了前に先食いして書いちゃってますが(笑)、
東野圭吾「ゲームの名は誘拐」と同系統と言っても良く、
どちらが面白いとも言い切れないくらい、どっちも面白い!
いや、どっちかっつーと、こっちの方が面白かったかも!
ちなみに、第10回吉川英治文学新人賞受賞作です。

で、何をもって『99%の誘拐』に軍配を上げたかというと、
誘拐事件が20年の時を経て二度起こるのです。
「おいおい、回数の問題かよ」というツッコミも聞こえてきそうですが、
そういう単純な話ではもちろん無く、
ひとつめの誘拐は、主人公である生駒慎吾が誘拐「される」側で、
ふたつめの誘拐は、生駒慎吾が誘拐「する」側なのです。

5歳の時、慎吾は何者かによって誘拐され、慎吾の父・洋一郎は、
自らの経営する会社の再建と引き替えに身代金を用意する。
慎吾は無事保護されるのだが、会社の再建資金となるはずだった身代金は戻らず、
父の会社は大手企業に吸収されてしまう。
この誘拐劇については、事件が時効を迎える7年後、末期ガンに冒された父・洋一郎によって、
慎吾に宛てた手記として書き残されます。

20年後、手記を読んで事件の全容を知った慎吾は誘拐を計画する。
慎吾は、父の会社を吸収した企業の技術研究員として勤務していて、
人質は、その企業の社長子息。
20年前の事件をなぞるように綿密に立てられた計画。
最新の電子機器技術を駆使して犯人の存在を消した慎吾は、
自ら誘拐劇に巻き込まれることでアリバイを確保する。

私がスゴイ!と思うのは、この二つの誘拐事件がストーリーの中で絶妙に絡み合って、
ひとつめの誘拐の真相が明らかにされつつ、二つめの誘拐のトリックが証されていくのです。
緻密なトリックで完璧なアリバイを作り出し、息をもつかせぬ展開で事態が次々に進展し、
もちろん死者は一人も出さずに、莫大な身代金だけが煙のように消える。
ハイテク尽くしの仕掛けだけでなく、あらゆる想定をクリアするように組み立てられたトリック、
またあちこちに張られた伏線、ついつい前の方のシーンを読み返して確認してしまいます。
そして事件が進展していくにつれて、なぜ慎吾が誘拐を企てたのか本当の理由が明かされます。
誘拐劇をエンターテイメントとして読ませる小説としては、ホントに傑作だと思います。

また、この作品が1988年(昭和63年)に書かれたというところも驚くべき点です。
最初の誘拐は、かの有名な三億円事件と同じ年である昭和43(1968)年に、
現在進行形で描かれる誘拐が昭和63年に起きたという設定です。
今でこそインターネットもモバイルPCも当たり前の時代で、
例えば東野圭吾の『ゲームの名は誘拐』(これが書かれたのは2000年です)も、
携帯電話とインターネットを駆使してトリックが組み立てられていたりしますが、
当時としては破格なまでの先進技術と電子機器が投入されて誘拐事件が描かれていて、
当時最新の「ラップトップパソコン」が登場し、「音響カプラー」を使って「パソコン通信」をしたり、
音声自動応答システムの女性の声が脅迫電話を掛けてきたりします。

ひとつは、岡嶋二人が、昭和63年当時に、
ここまでのコンピュータ知識を持ち合わせていたということ、
もうひとつは、それが本当に未来の(つまり現在の)トリック作りを予見していたということ。
blog「日記風雑読書きなぐり」のよっちゃんさんも書かれていますが、
リアルタイムで読んでいたら…と考えると、
文学部に通う大学生の私にはほとんどイメージ不能で、
まるでリアリティを感じられない推理小説として、白けちゃってたのじゃないかと思います。

17年前に書かれたハイテク駆使の誘拐トリック、いま読んでも充分楽しめます。
また、こういう感じの軽快でスピード感ある誘拐ものとしては、前にも書きましたが、
東野圭吾『ゲームの名は誘拐』のほかに、
柳原慧の『パーフェクトプラン』(第2回「このミス」大賞受賞作)もオススメです。

99%の誘拐』 岡嶋二人 著
講談社文庫 \730-
99%の誘拐 (講談社文庫)

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岡嶋二人 『99%の誘拐』 傑作!!ゲームとしての誘拐
誘拐を題材にして事件の周辺にある人間ドラマを描く作品は別として、身代金略取を企てる人質誘拐犯行のプロセスそのもののを主軸にしているミステリーもいくつか読んでいる。読んだその時にはおもしろいと感じた作品もないではないが、ほとんどが肝心な仕掛けの部分すら思い出せないものだ。 ...続きを見る
日記風雑読書きなぐり
2005/12/12 23:53
99%の誘拐
岡嶋 二人 ...続きを見る
シフクノホン
2006/01/12 17:48
「99%の誘拐」岡嶋二人
99%の誘拐発売元: 講談社価格: ¥ 730発売日: 2004/06売上ランキング: 113775おすすめ度 posted with Socialtunes at 2006/06/13 ...続きを見る
本を読む女。改訂版
2006/06/16 08:58
99%の誘拐
岡嶋 二人 99%の誘拐 出版社/著者からの内容紹介 緊迫度MAXIMUM(マキシマム)!空前絶後の完全犯罪 末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには8年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして12年後、かつての事件に端を発する新 ...続きを見る
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2007/01/09 10:07
「99%の誘拐」 岡嶋二人
2005年版この文庫がすごいの第一位に選ばれただけの価値がある。 とにかく面白い。 ...続きを見る
日々の書付
2008/08/22 23:23

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
この作品は出版当初から評価が高くて前々から読んでみたいとは思っていたんだけれど本屋さんの書棚に見えなくなって、一生懸命に探すことはしないがままに今回文庫版でお目にかかれた。誘拐モノで粋な作品としては絶品かもしれません。
よっちゃん
2005/12/12 23:50
TB&こめんとありがとうございます。
ほんと、絶品だと思います。
本文中で紹介させていただいたとおり、私が書いていない部分はよっちゃんさんの書評どおりの作品だと思います。
でも、初版からこれだけ年数のたった作品でも、文庫の帯ひとつで読者を増やす、新たな読者の目に触れる機会を作れるということは、偉大なことだと思います。
こばけん
2005/12/12 23:59
TBありがとうございます。
普段この手の小説を読まないのですが、時間がたくさんあるこの時期という事もあり、一旦読み始めたら一気に読み終えました。
誘拐の手口もオモシロイですが、それ以上にストーリーがよく考えられた作品だと感心しました。
なので、あまり詳しく本の内容をblogに書かない方が、まだ読んでいない人達にはよろしいかと(笑)
ishiken
2006/01/06 15:07
>ishikenさん
さっそくコメントありがとうございます。
ネタバレしないようかなり注意して書いたつもりなんですが、
改めて読んでみると、だいぶ書き込んでありますね…。
もう少し工夫しないといけませんね(汗)

こばけん
2006/01/06 18:08
こんにちは。
いつもTBありがとうございます。

岡嶋二人さんは20年も前から今の時代を見ていたかのような
作品を残していますよね。
この「99%の誘拐」もですが「クラインの壷」も1989年当時に
常識を遥かに超える擬似体験ゲーム機という設定で書かれて
いるので読んだ時には驚きました。
まだ未読みたいでしたので(違っていたらごめんなさい)是非
読んでみて下さい。(^.^)
それではまた。
シフクノホン
2006/01/12 18:15
>シフクノホンさん
コメントありがとうございます。
『クラインの壷』、たしかに未読です。
というより岡嶋二人さんの小説は、実は『99%〜』が初なのです。
探して読んでみますね>クラインの壷
こばけん
2006/01/13 11:10
blogの最初の7行だけ読んで読み始めたこの本を
今日読み終わりました。
二つ目の誘拐事件のところから、読むのに加速がつきました。
本を読み終わって、blogの続きを読んだらそうそうと思える
ポイントがいっぱいでびっくりしました。

楽しい時間をありがとうございました。
ねね
2006/02/07 21:53
>ねねさん
コメントありがとうございます。
一つめの誘拐事件もかなり読ませる内容ですが、
そうは言ってもプロローグ的位置付けですもんね。
私のBlogなんぞで本を読んでもらえてうれしいです(^^)

8行目あたりにネタバレ警報入れておいた方が良いかな?w
こばけん
2006/02/08 09:57

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