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zoom RSS 【読んだ本】沙高樓綺譚/浅田次郎

<<   作成日時 : 2005/12/15 18:45   >>

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私は明らかに浅田次郎のファンであり、ハルキストではないのですが、
それはさておいたとして、最近読んだ本の素直な感想として言わせてもらえば、
正直、『東京奇譚集』より面白かった!
もちろん『東京奇譚集』も自ら書いているとおり、
とても魅力のある短編集だし、楽しみました。
でーもー!こっちの方が、好き。

都心に聳える高層ビルの最上階に造られた空中庭園とラウンジ。
砂でできた大廈高楼を意味する「沙高樓」という名のサロンには、
各界で名をなし功をあげた名士たちが集い、
よそでは決して他言することのできない自らの秘密を明かし合うという。

沙高樓の主人、老齢の女装のマダムが述べる
「お話になられる方は、誇張や飾りを申されますな。
お聞きになった方は、夢にも他言なさいますな。
あるべきようを語り、巌のように胸に蔵うことが、この会合の掟なのです」
という口上で始まり、集まった客のうちの一人が語り部として己の秘密を語る、という
さながら「百物語」のような会合は「綺譚会」と題され、
夢のような現実のような秘密の話が明かされる会なのです。

沙高樓綺譚』は、
刀剣鑑定の家元・徳阿見談山が語り部となる「小鍛治」、
精神科の医師・志摩裕次郎が語る「糸電話」、
映画界の巨匠とコンビを組んだ名キャメラマン・川俣信夫の語る「立花新兵衛只今罷越候」、
“ガーデニングの女王”と呼ばれる人物の庭番をする老女・加倉井シゲによる「百年の庭」、
博徒一門の七代目総長・辰が語り部となる「夏の夜の刺客」
の5篇が収められた短編集です。

5つの綺譚(“奇譚”ではなく“綺譚”なんですね)を読んで舌を巻くのは、
解説で新保博久氏も書いているとおり、浅田次郎の抽出の多さとその深さです。
エッセイ『極道放浪記 殺られてたまるか!』、通称「とらたま」シリーズなどにあるとおり、
ピカレスクものにおける知識の多さや深さ、リアリティを、
浅田次郎が持ち合わせているのはよく解ります。
だから、浅田次郎が描く博徒やテキ屋などのヤクザ者は、ものすごくリアル。
それから、『壬生義士伝』なんかを書いているから、幕末ものもわかる。

だけど今回の短編集はなんですか!
足利の時代から連綿と続く刀剣の世界とか、
戦後の日本映画界の舞台裏とか、
はたまた、英国風ガーデニングの本格的な知識とか、
生半な下調べや取材では、到底、読者を惹きつけて放さない小説にはならないハズ。

読書感想としては、どの短編も、それぞれの語り口に引き込まれ、
どんな綺譚が語られるのか、どんな結末となるのか、
ついつい引き込まれて、一度に読んでしまいます。

特に心に残るのが、時代劇全盛時代の京都太秦撮影所に、
時空を越えて現れたかのような幕末の志士・立花新兵衛が、
まさに眦を決した志士たらん芝居をする「立花新兵衛只今罷越候」です。
読者としては、いや、物語中の聞き手たちも、どうしても、ある想像をしたくなる譚なのですが、
それを「しょうもないこと言わんとき」と忘れかけた京都弁で否定する老キャメラマンの
真の胸の内はどうなのだろう、と思いをめぐらせてしまいます。

もうひとつ、「夏の夜の刺客」では、
三ン下の時分を回想する大親分・辰の語りで、浅田節炸裂!
ネタバレするとイケナイので、どの部分で、とか書きませんが、
胸にグッと迫るものを感じて目がかすみました。

ところで、文庫本のオビには「ミステリー」とありますが、
これはミステリーではありません。
やはり書名にあるとおり綺譚集です。

続編で『沙高楼綺譚 草原からの使者』が、徳間書店から今年出たのですが、
どうもAmazonでのユーザー・レビューが良くない…。
悩むなぁ。悩むがいずれ読んでみよう。

沙高樓綺譚』 浅田次郎 著
徳間文庫 \660-
沙高樓綺譚 (徳間文庫)

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