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zoom RSS 【読んだ本】白夜行/東野圭吾

<<   作成日時 : 2006/01/31 19:43   >>

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話題のドラマの原作『白夜行』、ようやく読み終えました。
10日もかかっちゃいました。
このところあまり時間がなかったというのもあるけど、厚いんだもん!
つーか、ブ厚すぎ!
文庫で850ページ!文庫なのに1000円!
しかし、それを乗り越え読み終えるだけの手応えある作品でした。
直木賞候補(99年)となったのも納得。

ドラマ化するにあたって敢えて手に取ったのですが、
原作読むのと平行してドラマも見てしまうと、
ついついドラマ出演者にセリフをしゃべらせたり行動を取らせてしまうので、
ドラマはひとまず録画して、影像は一切見ずに読みました。
だって武田鉄矢が…

いまさらあらすじを書くのもなんですが、ま、一応。
1973年、大阪の廃墟ビルで質屋の主人が他殺体で発見される。
事件の容疑者は次々と浮かぶが、結局決め手を欠いたまま
“容疑者”が死亡するなどして迷宮入りしたまま時効を迎えることになる。

被害者の息子が桐原亮司。当時小学6年生。
そして事故死したとされる“容疑者”の娘、西本雪穂。同じく小学6年生。
二人の人生は交差することなく別々の道を生きているように見えるが、
物語を読み進むにつれ、二人がどこかで繋がっていることがほのめかされる。
しかし確証は無い。

並はずれて美しい少女・雪穂と、暗い目をした少年・亮司。
物語は、二人の成長を描くことを通じて進んでいきますが、
そこには、中学、高校、大学へ進学するなど肉体的な成長は描かれるものの、
精神性や心理面での成長は描かれず、むしろ淡々と時の経過が示されます。

ここで、この作品が読者を惹きつける書かれ方として、
時代背景を示すための「19××年」という表現がまったく登場しません。
つねに、その時代の出来事、第2次オイルショックやインベーダーゲーム、
バブル景気、阪神タイガース優勝、バブル経済崩壊など、
その時代時代を示す出来事によって、時の経過と背景が物語られます。
そのことで読み手は自分の記憶をたどることになり、物語の世界に更に引き込まれます。

そうした時の経過と二人の成長の間で、彼らの周辺では奇妙な事件が次々と起こります。
それらの事件に雪穂や亮司は、関わっているようでその確証はない。
さらに二人の関係も繋がっているようでその確証はない。
あの事件の実行犯はもしかして?
この事件が起きるよう仕向けたのはもしかして?
「もしかして?」ばかりが続く内に、読み手の中で疑惑は確信に変わってゆくのです。

そして同じように、物語の中で疑惑を確信に変えながら事件と二人を追うのが、
質屋殺しの捜査を担当した老刑事・笹垣潤三。
時効を過ぎてもなお追い続け、19年間の時を費やします。

そこかしこで書かれていますが、この作品『白夜行』は、
極端なまでに主人公の心理面の描写が抑えられています。
まったく描かれていないと言っていい。
二人の様子は、彼らを取り巻く周りの人間からしか窺うことが出来ず、
物語は淡々と進み、さまざまな事件も淡々と起き、雪穂も亮司も淡々と生きているように見える。
しかしだからこそ、業の深さのようなものが、重く、強く、描き出されるのです。

19年前の質屋殺しの真相について、初めはちょっとした“嫌な予感”程度だったものが、
読むほどに、その予感が確信に変わることを、
遠回しに裏付けるような事実が一つひとつ示されていき、そのたびに、
見てはいけないものを見ざるを得なくなったような、冷たく重いものがこみ上げてきます。

亮司と雪穂、二人を結ぶ糸はどこにあったのか、
そして二人と事件を繋ぐ線は、一体何だったのか。
ラストで全てが解き明かされ、物語は意外な結末を迎えるのです。

これは間違いなく傑作です。
上梓された当時に読んでいたら、
直木賞の選に漏れたことに対する不満を、間違いなく口にしていたと思います。

白夜行』 東野圭吾 著
集英社文庫 \1,050-
白夜行 (集英社文庫)

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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
主人公たちの心情の描写が抑えられていることによって、
業の深さが描き出されるって、ほんとそうですね!
「愛」の捉え方も色々できるし、ミステリーを越えてすごい作品だと思います。
june
2006/01/31 23:21
TB返しさせていただきました。
やはり武田鉄矢はアウトのようですね(^^)
心理描写が徹底的に抑えられているのに、ここまで作品世界に引き込まれた小説は滅多に無いので、おっしゃるとおり傑作だと思います。
ドラマ化をきっかけに、もっと原作を読む人が増えればいいですね。
モーラ
2006/02/01 10:39
東野圭吾の傑作と言えるのはこれと『秘密」『手紙』ですね。人間を描いて読者の心を揺するという意味での「傑作」ですが。たしかにこれと『手紙』が直木賞候補に挙った時はまさかハズレとは思いませんでした。
とうとうとした「時の流れ」が読者の感傷を誘います。不易と流行。19年、その流れにあって多くのものが変わっていった。しかし変わらないものがあった。その愛の形が特異なものであっても純粋さがとても哀しい。
そう思うと「容疑者X」の「純愛」などはいただけないですね。
よっちゃん
2006/02/01 14:42
>juneさん
ここまで作品世界を作り上げている小説です。
ほんと、ミステリーを超えてスゴイ作品ですね。

>モーラさん
『野ブタ。をプロデュース』がそうだったように(^^)
これを機会に東野圭吾ファンが増えると良いですね。

>よっちゃんさん
おおお!その通りです。
不易流行の流れの中で変わることのなかった純粋さ。哀しいです。
恥ずかしながら『秘密』と『手紙』はいずれも未読でして、
「ぜひ読みたいリスト」の中に入っています。
こばけん
2006/02/01 17:17
ほんとにこれは傑作ですよねー。
>初めはちょっとした“嫌な予感”程度だったものが、
>読むほどに、その予感が確信に変わる
この感じが本当に、東野さんうまい!って感じで・・・
じわじわと恐さがましていく本でした。
わたしは直木賞をとれなかったことに、
昔、さんざん文句を言いましたよ!
ではでは。
ゆうき
2006/02/09 10:28
>ゆうきさん
コメントとTB、ありがとうございます。
そうなんですよね。
じわじわと怖さが増してきて、
なんだか真実を知ってはいけないような
気がしてしまうのです。

ドラマを入り口に原作を読もうという人も多いでしょうけど、
『白夜行』に限らず、原作とドラマは違うのだということを
解ってて原作を手に取るのなら、
それはそれで良いんじゃないかな、と。
でもやはりドラマから入ってしまうのはもったいないですね。
こばけん
2006/02/09 13:54
TBありがとうございました。
二人の心情がわからないからこそ謎解きの楽しさも増していますよね。
本の厚さに同じような反応されていて面白かったです(笑)
でも一度読み出してしまうと最後まで読まずにはいられないぐらい引き込まれる作品だったので、読んだ後はあの厚さも納得でした。
琉歌
2006/02/12 12:15
>琉歌さん
TB&コメント、ありがとうございます。

実は、本の厚さへの反応があまりに私と同じだったので、
思わずTBさせて頂いた次第です(笑)

おっしゃるとおり、読み終えた頃にはあの厚さにも納得!でしたね。
こばけん
2006/02/13 00:26
こばけんさん、トラックバックできてないですね。
トラックバックのやり方がわからなくて申し訳ありません。

なのでコメントさせていただきます。(未熟者で失礼します)
こばけんさんの
「原作読むのと平行してドラマも見てしまうと、
ついついドラマ出演者にセリフをしゃべらせたり行動を取らせてしまうので、・・・・・」
そうですね。
私は最終回以外、ドラマの後に原作を読んだので
すっかり出演者にしゃべらせながら読んでしまいました。
とはいえドラマもけっこうよい出来であったと思います。
原作の雰囲気をあまり壊さずに映像化されたような気がします。
それから、東野さんの才能に嫉妬した、と書かれていた、
馳星周さんの解説も面白いと思いました。
面白い作品って解説まで面白いと思ってしまうのはなぜなのでしょう。
248n
2006/05/05 00:44
こばけんさん、丁寧な説明、とてもありがとうございました。
こうして親切にしていただけること、すごく嬉しく思います。
どうもありがとうございました。
248n
2006/05/06 00:17
>248nさん
おっ!TB出来てますね!やったぁ!
これでバッチリです。
文章だけで説明するのは難しいなぁ、と思いながらがんばって書いたのですが、こうしてTB成功しているところを見ると、伝わったのですね。
よかったよかった♪
こばけん
2006/05/06 01:09
「ぱんどら日記」へトラックバックありがとうございます。

「白夜行」は、読後にものすごく考えこんだ一冊でした。この手の小説、私は好きなんですが、読者に考えさせる余地がちょっと大きすぎる気もするんです。作者が意図したことが明確に読者に伝わっているのかどうかは、よくわかりませんね……。

そういう意味では、直木賞受賞作の「容疑者Xの献身」のほうが、主人公の感情が、より伝わりやすいんじゃないでしょうか。
ぱんどら
2006/05/08 13:11
>ぱんどら
なるほど、確かに“考えさせすぎ”という見方もあるでしょうね。そして“考える”のが好きな人たちの支持を得て“名作”と呼ばれる。のでしょう。
『容疑者x〜』方が確かに解りやすいし伝わりやすかった。その違いが直木賞という賞の判断が分かれるところだったのではないかなぁ、と。
こばけん
2006/05/08 20:32
はじめまして♪
ミクシィからこばけんさんのブログをみつけTBさせてもらいました。
百夜行はほんとなが〜い小説でしたね。
ドラマはマリー見てないんです。結構好評だったようですが??
これからも遊びにきま〜す。よろしくおねがいします 
マリー
2006/06/03 09:53
>マリーさん
ようこそ♪TB&コメントありがとうございます。
ドラマはドラマで面白かったですよ。(と私は評価しています)
でも、小説とドラマは同じ物語でも違うアプローチなので、それぞれに楽しむ、って感じですかね。
原作の再現性というよりは、ドラマそのもののおもしろさと捉えた方が良いような気がしました。
またよろしくお願いします。
こばけん
2006/06/04 02:34

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