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zoom RSS 【読んだ本】クロノス・ジョウンターの伝説/梶尾真治

<<   作成日時 : 2006/01/06 13:54   >>

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安っぽいのかもしれないけど、なぜか思いっきり泣きました。
言っちゃ悪いけど、この梶尾真治って人、すごく文章が下手なんですよ。
でも、読みながら泣いちゃったんじゃぁ、こりゃぁ名作なんだろうな、って。
タイムトラベル・ロマンスって、「SFですよ」ってのが前提になっているから、
どんな都合のいいことが起きても不思議はないはずなんだけど、
そのはずなのに、まんまと泣かされました。

クロノス・ジョウンターとは、機械装置の名前です。
「クロノス」というのは、時をつかさどる神の名前で、
「ジョウント」というのは、空間から空間へ瞬時に移動することを意味するのだそうです。
つまりクロノス・ジョウンターとは、ある時点からある時点へ移動することのできる装置、
すなわちタイムマシンなのだけれども、現在から過去に向かって物質を動かすことのできる、
いわば一方通行のタイムマシン、作中では「物質過去射出機」という正式名称が与えられています。

クロノス・ジョウンターの伝説』は、
このクロノス・ジョウンターをめぐる3人の主人公を描いた連作短編で、
「吹原和彦の軌跡」
「布川晶良の軌跡」
「鈴原樹里の軌跡」
の3篇からなっています。
このうち「吹原和彦の奇跡」は、先に書いた、演劇集団キャラメルボックスによって、
「クロノス」というタイトルで舞台化されています。
また、この本は、映画「この胸いっぱいの愛を」の原作本でもあります。
蛇足ながら付け加えると、作者の梶尾真治は、映画「黄泉がえり」の原作も書いています。

3篇のうち「吹原和彦の軌跡」については、舞台『クロノス』について書いたときにふれているので、
こちらをご覧ください。
キャラメル・ボックスの舞台でも、ストーリーは原作にかなり忠実に表現されています。

2話目の「布川輝良の軌跡」では、
朝日楼旅館というあこがれの建築物を、解体前に一目見たい、
ただそれだけの目的を果たすために過去へ遡った布川輝良が、5年前の世界で恋に落ちます。
輝良は、いままでに経験したことのないほどの感情で、枢月圭という女性を愛してしまい、
同時に圭も同じくらいの強さで輝良を愛しますが、
過去に干渉してはならないのは時間旅行の鉄則です。
そして、どんなに二人が強く愛し合おうとも、クロノス・ジョウンターの機能の都合で、
数十時間後には、輝良は未来へと弾き返されてしまい、
そのまま二人は再び出会うことはないだろう、という運命にあるのです。
吹原和彦も強い愛によって奇跡を引き起こしましたが、ここでも奇跡は起こります。
時の力と運命には逆らえない、と、読んでいる私自身諦めていたのですが、
思いもよらない、いや、もしかしたらとうに諦めてしまっていた結末が、輝良のもとに訪れるのです。
SFなんだから、タイムトラベル小説なんだから、起こっても不思議はないんですが、
泣けるんです。も、どーしょーもないくらい。

「鈴原樹里の軌跡」で奇跡を起こすのは、主人公の樹里自身。

タイムトラベルSFの世界では、有名な「親殺しのパラドックス」というのがあります。
自分が生まれる前にさかのぼって自分の親を殺しに行った場合、
親を殺してしまったら自分の存在が無くなってしまうのだから、
時を遡って親を殺しに行くこともなくなり、親は無事なはず。
しかし、親が無事であれば自分が生まれてしまうので、やはり親を殺しに行くのでは…。
というメビウスの輪の表と裏のような、堂々めぐりのパラドックスです。

樹里は、幼い頃、大切な人を失ったのをきっかけに医師を目指し、
医師となった大人の姿で、過去へ愛する人の命を助けに行くのですが、
愛する人の命を救ってしまったら、自分は医師にならないのではないか、
医師にならなければ愛する人の命を救うことは叶わないのではないか、というパラドックスに陥ります。
樹里は、自らの心の強さでそのパラドックスを克服し、愛する人を助けるのですが、
物語の結末では、時の神=クロノスが、粋な計らいとも言える、
思いがけない“副作用”をもたらし、感動のエンディングとなります。
恥ずかしながら、これもすっごく泣きます。
ほんと安っぽいなー、って思っちゃうんだけど、泣いちゃう。
ティッシュでハナをチーン!てかんでから読了。

いや、オレってホント作戦どおりだよなぁ…とか思っちゃったりするわけですが、
私の中では、それが一つの尺度になっているわけだから、まぁいいかと。

それにしても残念なのは、作者の文章がヘタなこと。
表現や喩えの使い方が拙い、というか。
まるでSF好きの男の子が高校の文芸部で書いたみたいな、そんな感じ。
物語は感動できるのにね。

ところで、キャラメルボックス『クロノス』について書いたときは、
物語のエンディングについて、真逆の結末もあり得たのではないか、
むしろその方が好きかもしれないというようなことを書きましたが、
3篇とも読み終えて考えを変えました。
梶尾真治さんのテーマは、あとがきでもご本人が書かれているように、
「時の力と愛の力」なわけで、あくまでもタイムトラベル・ロマンスなのでしょう。
とすれば、この『クロノス・ジョウンターの伝説』に収められた3つの物語は、
いずれも書かれたとおりの結末で良いのだと思います。
せめて物語の中では、愛の力には、時の力に打ち勝ってほしいのです。
現実の世界では、愛の力ほど不確かなものはなく、
時の力ほど冷淡で抗いがたいものはないと思ったりするだけにね。

どうやら、演劇集団キャラメルボックスは、
「布川輝良の軌跡」「鈴原樹里の軌跡」についても、来春あたりに舞台化するようです。
実はこちらも今からとっても楽しみなのです。

新編クロノス・ジョウンターの伝説』 梶尾真治 著
朝日ソノラマ \1,050-
新編クロノス・ジョウンターの伝説

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2006/07/05 00:47
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2006/12/18 10:11

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
昨日、読み終わりました。
2話目の布川さんのお話にとくにはいってしまいました。
電車でちょっと泣いてしまったのです。

文章のヘタさについては、私は気になりませんでした。
ありえない状況や設定の梶尾ワールドにはまりこんじゃったんでしょうね。
ねね
2006/03/11 18:06
>ねねさん
こめんとありがとうございます♪

布川さんと鈴原樹里さんのストーリーを、
演劇集団キャラメルボックスが舞台でやりますよ。

『あしたあなたあいたい』
『ミス・ダンデライオン』
原作 梶尾真治「クロノス・ジョウンターの伝説」
   (朝日ソノラマ刊)
脚本・演出 成井豊+隈部雅則
■大阪公演
2006年3月23日(木)〜27日(月)
シアターBRAVA!
主催/毎日放送
協力/キョードー大阪

ということらしいです。
この劇団はオススメです(^_^)
こばけん
2006/03/12 00:48

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