【読んだ本】少女には向かない職業/桜庭一樹


これは、「ふたりの少女の凄絶な《闘い》の記録」です。
(『少女には向かない職業』カバー返しより)

桜庭一樹の『少女には向かない職業』、
中学生の女の子が、二人も人を殺してしまうミステリーであり、
まさに「二人の少女の闘いの物語」です。

著者は、一見して男性の名前のようですが、女性です。
文章を読んでいて「そうじゃないかなぁ」と薄々思っていたものの、
ペンネームから判断されるのは、どう考えても男性で、
で、ググッてみたらご本人のサイトにたどり着き、
女性であることが判明した次第。

作者のことをよく知らないのでついでに想像すると、
かなり若い作家ではないかな。
というのは、主人公・大西葵を中心とした中学生像は、
イイ歳こいちゃった大人では描けない、
たとえば白岩玄の『野ブタ。をプロデュース』の主人公・桐谷修二(高校生)や、
綿矢りさが『インストール』の文庫で書き下ろした短編
「You can keep it.」に登場する大学生・城島など、
“イマドキの子ども”像として底の方で通ずるものを感じるのです。
これは、たぶん、オジサンやオバサンには、書けない。

主人公・葵の、クラスメイトの女の子グループの中での振る舞い方、
友だちとの関係の築き方、
幼なじみの男子・田中颯太との会話や付き合い方、
颯太を「小学校からのゲーム仲間」と自分にも言い聞かせながらも抑えられない別の感情、
学校やアルバイト先の漁港で見せる「おしゃべりで明るい葵ちゃん」と
母親の前で見せる、家の外とは正反対の表情や態度の違い、などなど、
数え上げればきりがないほど、ここにはイマドキの子どもがいるのです。

私が中学生の頃は、思いもしなかったことだけど、(わ、私だけ?)
葵は、「そういう子でいよう」と自分で決めて、「そういう子」として振る舞っている。

中2の夏休み、葵の前に存在感を急に現す謎の図書委員・宮乃下静香。
せっかくもともと茶色い地毛を真っ黒に染めておかっぱにし、
目が悪くもないくせにダテ眼鏡をかけている。
作中で静香自身が告白することになるが、この少女もまた
「そのようにしよう」と考えて「そのように」振る舞っているのである。

クラスでは“笑わせ係”の葵と、まるで目立たない図書委員の静香、
客観的には仲良くなりようがないこの二人が心を通じ合わせるのは、
二人の少女が背負っている、
あるいは背負っていると思い込んでいる「枷」のようなものがあるからなのかも。

静香の出現をきっかけに、葵は、
夏休みにひとり、冬休みにもうひとり、人を殺すことになってしまう…。
ひとり目は葵自身が抱く悪意によって、そしてふたり目は斧で。
しかし二人の少女が人を殺さなければならなかったのは、
《闘い》に勝つためだったのだろう。
彼女たちが闘ったの相手とは、大人?、世間?、自分自身?

イイ歳したオトナだからこそ、いろいろ考えてしまう作品なのかもしれない。

少女には向かない職業』 桜庭一樹・著
東京創元社 \1,470-

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2005年12月09日 19:41
こんにちは。TB&コメントありがとうございました。
桜庭さんって女の人だったんですかΣ(゜д゜)
男の人だとばっかり。極真空手好きってどこかで読んだ
ような…ああでも女性でも格闘技好きな人いますもんね。
驚きの情報ありがとうございました。

そしてきっちりした感想を書かれてて頭が下がります…_(._.)_
こ,こんなわたしのブログですが,TBさせていただいても
よろしいでしょうか?
よろしくお願いします!
こばけん
2005年12月09日 19:58
mamimixさん、こん**は。
コメントありがとうございます。TBもぜひ!
桜庭さん、女性のようでした。
私が新宿・紀伊國屋書店で手にしたのが偶然「サイン本」で、
ずいぶん女の子っぽい字を書く人だなぁ、と思って調べてみたら、
ちまたでは“美少女作家”とも言われているらしいです。
本文中に書いているように年齢は知らないのですが。
ちなみに同じアーティクルにTBしてらっしゃった「ゆうき」さんも、
カテゴリを「その他(国内男性)」に分類してらしたので、
よくある間違いのようです(笑)
ゆうき
2005年12月10日 01:19
こんばんは。
コメント&トラバ、ありがとうございました。
噂の「ゆうき」です(笑)
桜庭一樹さん、女性なんですか!!!
うわー、知らなかったなあ。
さっそくジャンルを訂正しておきます。

でも、そう言われてみると、女の人が書いた本だなあ、
という気が突然してくるというか、
色々、ふに落ちる感じがします。

情報、ありがとうございました!

こばけん
2005年12月12日 13:08
>ゆうきさん
失礼しました(笑)
どうやらそういうことらしいんです。
私も桜庭一樹さんのオフィシャルサイトで知った次第。
URLはこちら(↓)。
http://sakuraba.if.tv/index.html
そる
2006年05月26日 22:51
こちらでは初めまして>挨拶
すっかり、コメントが遅くなってしまい申し訳ないです。
コメント&TBありがとうございました。ああいう、単純な感想に対する意見というのは実は少ないので、嬉C(桜庭さん風)ですね。
ところで、普段ライトノベルは読まれていないようですけど、桜庭一樹という作家はそういった戦場(プラットホーム)をいい意味で意識しないので──つまり一貫したテーマをしっかりと持っている本当の意味での“作家”なんだと思っています。
気軽に行わないのがポリシーなので、オススメ…とまでは言いませんが。「赤×ピンク」ファミ通文庫
「推定少女」ファミ通文庫
「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」富士見ミステリー文庫
こんなもありますよーと、いうカンジで。既出なら激しくピエロですが…
あと、一般文庫ですが。「ブルースカイ」ハヤカワ文庫JA
というのもアリ。どれもこれも桜庭節が炸裂しまくってますよ!
初カキコで駄文長文失礼しました。ではでは。
こばけん
2006年05月27日 18:29
>そる さん
おお!コメントありがとうございます。
確かに普段ほとんどライトノベルは読みませんねぇ…
オススメ本、たくさんありがとうございます。
実は『砂糖菓子の弾丸~』を読みたいなーと思っていたところなんですよ。
これからもよろしくお願いします。
こばけん
2006年06月21日 02:05
いま、GyaOでドラマやってるんですね。
友人から偶然聞いて初めて知りました。
観なくちゃ!

この記事へのトラックバック

  • 少女には向かない職業

    Excerpt: 桜庭 一樹 少女には向かない職業 ミステリーっぽくないミステリー。 ってかミステリーじゃないんじゃ…。 またまた色々考える本読んじゃいました。 最近疲れてるからかなぁ…。.. Weblog: 乱読日記 racked: 2005-12-12 23:03
  • 「少女には向かない職業」 桜庭一樹

    Excerpt: 少女には向かない職業posted with 簡単リンクくん at 2005.11.20桜庭 一樹著東京創元社 (2005.9)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る Weblog: 今日何読んだ?どうだった?? racked: 2005-12-13 20:19
  • 少女には向かない職業

    Excerpt: 桜庭 一樹 少女には向かない職業 Amazonで詳しく見る bk1で詳しく見る   *あらすじ* 島の夏を、美しい、とふいにあたしは思う。強くなりたいな。.. Weblog: シフクノホン racked: 2005-12-15 09:21
  • (書評)少女には向かない職業

    Excerpt: 著者:桜庭一樹 大西葵13歳は、中学2年生の1年間にふたりの人を殺しました。1人 Weblog: たこの感想文 racked: 2006-02-05 20:39
  • ノベル「少女には向かない職業」感想

    Excerpt: 「少女には向かない職業」☆×6+(殿堂入り・リミットオーバー) 東京創元社:著・桜庭一樹 “あたし、大西葵13歳は、中学2年生の1年間で、人をふたり殺した。” 【島の夏を、美し� Weblog: すたじおG racked: 2006-05-22 22:48
  • 少女には向かない職業、桜庭一樹

    Excerpt: カバーフォト:Ben Jobfield。 著者はゲーム等のノベライズと、多彩なライトノベル作品を執筆。東京創元社のミステリ・フロンティアシリーズの1冊で初の一般向け作品です。「2006年度版この.. Weblog: 粋な提案 racked: 2006-07-23 02:33
  • コズミック・ブランチ(宇宙の枝)

    Excerpt: ◆本日のひとこと◇ 「わたしはぶどうの木で、あなたがたは枝です。人がわたしにとどまり、わたしもその人の中にとどまっているなら、その人は多くの実を結びます。わたしを離れては、あなたがたは何もすることがで.. Weblog: 音・楽・喫・茶[muse-cafe] racked: 2006-07-31 20:45
  • 桜庭一樹『少女には向かない職業』

    Excerpt: 桜庭一樹『少女には向かない職業』 東京創元社 ミステリ・フロンティア 2005年9月30日発行 下関近くの小さな島に住む大西葵13歳。 彼女は中学2年生の一年間で、人をふたり殺した・・・。 .. Weblog: 多趣味が趣味♪ racked: 2006-10-29 14:29
  • 目薬の木とは?

    Excerpt: 目薬の木とは?メグスリノキ(目薬の木)とは、四国、九州などに広く群生しているカエデ科の落葉樹です。千里眼の木、長者の木、花楓など様々な名称で呼ばれています。メグスリノキ(目薬の木)は、その名の通り、江.. Weblog: 視力回復!視力回復でメガネを取ったらアラ美人! racked: 2007-01-17 16:27
  • 少女には向かない職業 桜庭一樹

    Excerpt: 少女には向かない職業 ■やぎっちょ書評 2007年初の5つ★です。でもね「よし!5つ★来ました~」な感覚はなくって、「あぁ、5つ★ってこうなんだ」「岩に染み入る蝉の声」ってこうなんだぁ、みたいな。.. Weblog: "やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!! racked: 2007-04-15 01:43