【読んだ本】風に舞いあがるビニールシート/森絵都

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遅まきながら第135回直木賞受賞作
風に舞いあがるビニールシート』を読みました。
しかも、単行本を買って読んだのではなく、
昨年の8月に買って手をつけずに置いておいた
「オール讀物」に掲載されたのを、です。
新年最初の読書記事がそれというのもどうかなぁ、
という迷いはあったのですが、
そんなこと言ってると、また書きそびれたりするので、
ともかく書くことに。
直木賞受賞作だからほめるわけじゃありませんが、
なるほどさすが。

本作『風に舞いあがるビニールシート』は、
6編からなる短篇集ですが、
「オール讀物」で読んだ私は当然、全部読んでません。

「風に舞いあがるビニールシート」は、
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)で働く主人公の里佳と、
同じくUNHCRの専門職員として働いていた彼女の元夫・エドとの
アイデンティティと愛情をめぐる物語、だと思う。

ザイール(現コンゴ)、エチオピア、コソボ、アフガンと、
難民キャンプの現場=フィールドを飛び回って命懸けのミッションを行い、
一年のうち数日しか東京の自宅に帰ってくることのない夫・エドワードの
世界、人類(大げさじゃなく)、そして愛するパートナーである由佳に対する思いと、
一年のほとんどをエドの帰りを待つことで過ごす由佳の
夫、家族、愛情、幸せについての考え方感じ方。

お互いに相手を心から愛しているからこそ、
人生について真剣に考えているからこそ、
二人の軌跡が決して交差しないことを確信してしまう狂おしさ。

価値観の不一致。離婚の理由を述べる欄にはそう記したけれど、
それは二人の敗因ではなく、引き分けの証なのだ。

彼らが確固たる価値観を持ち、真剣に人生を追求しているからこそ導いてしまった結論。

そして、ついにはアフガンのフィールドで帰らぬ人となってしまったエドに対する喪失感に
由佳はなおも、自分の在るべき姿を、心の在処を探し続けることを強いられる。

自分がいかに漠然と日々を過ごしていないか、
なんてことを反省するに至るほど説教くさい作品ではありませんが、
真剣に生きるエドと由佳の姿に心を揺さぶられます。

森絵都さんの作品は、本作と『DIVE!』を読んだだけですが、
感情のピークへの持っていき方がうまい!
『DIVE!』もかなり持っていきますが、
(↑名作!レビューは後日(^_^;)
「風に舞いあがるビニールシート」も、クライマックスは目頭が熱くなりました。
(『DIVE!』は嗚咽しましたが…)

そして、物語の結びへと続くエピローグもうまい。
こりゃあ、やられたなぁ、と素直に感服する収め方です。

蛇足ながら書き足すと、
「オール讀物9月号」同時に掲載されている、本作からの短篇「ジェネレーションX」も
なんというか、清々しい短篇です。

40を目前にした(私と同世代の)弱小出版社勤務の野田健一は、
自社の通販雑誌で紹介した商品に誇大広告があるとのクレームで、
商品のメーカーの営業担当と一緒に、宇都宮に住む客のところへ
東京から車でお詫びに行く道中のストーリー。

同行するメーカーの営業担当は20代後半の若者で、
健一から見ればビジネスマナーがなってない所謂‘今どきの若者’風で、
健一は相容れないものを感じるが、
東京-宇都宮のロングドライブがもたらした二人の会話を通じて、
会社員をなりわいとする世代を隔てた二人の男性の間にあった、
目に見えない‘隔たり’を氷解させ、気分のいい結末へとたどりつきます。

このように書こう、と考えて書かれた小説。
そんな印象です。
この2篇を読んだだけでも『風に舞いあがるビニールシート』が、
優れた短篇集であることを予感させます。

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風に舞いあがるビニールシート』 森絵都 著
文藝春秋 ¥ 1,470 (税込)

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この記事へのコメント

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2007年01月03日 23:04
オメデトウ
本年もよろしく、です

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